農家の家はなぜでかいのか

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 日本中の農家の家は、なぜでかいのでしょうか。

 

「富の再分配」

農家の家がでかくなったのは、いまから73年前からです。

農地改革という、日本の社会構造を大きく変える出来事がありました。 

ざっくりいうと、終戦直後の1947年に、アメリカの命令で、地主さんが独占していた田畑を、日本政府が、強制的に安価で買い上げ(実質とりあげ)て、小作人さんに売り渡した(実質ただであげた)んです。

一夜にして、日本中の小作人さんたちは、田畑を所有するんです。

小作人さんたちが、一番最初に思ったことは、

「とりあえず、家を建てよう。」

所有したばかりの田畑をいくらか売って、現金をつくり、家を建てました。

このとき参考にしたのは、村で唯一のお金持ちである地主さんの家でした。

農家の家がなぜでかいのか。

答えは、元小作人さんたちが、一斉に大きな家を建てたからです。

 

「大きな落とし穴」

大きな家は、建てた後に、莫大な維持費が半永久的にかかるんです。

中でも、日々の掃除は、とんでもなくお金と時間がかかります。 

お金持ちが大きな家で生活できるのは、掃除が行き届いているからです。

大きくてきれいな空間こそ、居心地がいいんです。大きな家の掃除は、片手間にできるようなものではありません。彼らは、女中さんやメイドさんを雇って掃除してもらいます。

元小作人さんには、大きな家を建てるお金はあっても、女中さんやメイドさんを雇うお金はありません。

というか、そもそも人から家事を買うという発想がないんですね。

今まで住んでいた小さな家なら、仕事の合間でも十分掃除できました。

でも、地主さんの大きな家は、素人が掃除できるレベルではないんですね。

その結果、元小作人さんは、ずっと掃除し続けるんです。でも全然きれいにならないんです。なぜなら、家が以前より、何倍も大きいからです。日々の仕事でただでさえ忙しいのに、さらに終わらない掃除が待っているんです。 

 

 

「大きな落とし穴2」

事態はさらに混沌としていきます。 

元小作人さんは、周りの元小作人さんたちと、家の大きさで張り合うようになります。家が大きければ大きいほど、見栄をはれているとう風潮が、村という閉鎖空間に蔓延していきます。

残念ながら、見栄ははれてないんです。 

本当のお金持ちの家って、単純に広いんです。

  • 母屋
  • 離れ
  • 馬小屋(車庫)
  • 女中さんの家

これだけすべてそろって、はじめて見栄をはれるのが、大きな家なんですね。もちろん、各々すべてに、維持費がかかります。庭師さんや、丁稚奉公さんなど、人を雇えること前提なんです。 

人を雇う余裕はないけど、大きな家に住みたい。そう願った結果、せまい敷地に、大きな家と申し訳程度の庭だけあるという、願い通りの農家の家が形作られるわけです。

 

「気持ちは汲んであげたい」

戦後、雨の後のタケノコのように乱立した、でかい農家の家は、21世紀の時の流れの中で、ゆっくりと消えていくでしょう。いましか見ることができない、ひとつの時代の風景なんです。

たしかに、いまの時代にまったく合ってないです。でも、そんな馬鹿でかい農家の家を、ナデミタコは大好きなんです。

なぜなら、祖父や祖母は、それをどうしてもやりたかったんです。彼らのお父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、すべての先祖が、生きぬいて繋いでくれた命を、形にしてあげたかったんです。

 

「次の農家の形 」

いまの日本は、中間層が大多数です。ですので、どの時代の日本よりも、富が平等に分配されているといえます。

国力を見てみると、戦前の日本よりも、圧倒的にいまの日本のほうが強いです。

養える人口は、戦前の6000万人から、1億2000万人と2倍に増えました。

経済力は、戦前は、ぎりぎり列強国に入れてもらえるくらいでしたが、いまでは世界3位です。 

農地改革によって、地主さんも小作人さんも、有無を言わさず全員中間層になって、結果よかったんです。

ほとんどすべての日本国民は、毎日食べることができて、着る服があり、屋根があるんです。犯罪率は世界最低で、寿命は世界一なんです。 

歴史は本当に不思議です。

わたしたち、いまの世代の農家が、どんな家を願うのか。

今回は、大局観と長期的な視野、聞く耳を持って、形作ることができるといいですね。