スタープレイヤー

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日本の会社組織は、大きな変革を求められています。いままでの慣例だと、出世や昇給というのは、部下ができることを意味しました。現場の第一線から引いたところで、コーチとしての役割を求められます。でも、それを望まない有能社員が現れだしたんです。

社員は全員、プレイヤーから始まります。しかし、必ずしもすべての社員が、上司や管理職という名のコーチ業になりたいわけではないんです。とくに、営業成績がよかったり、卓越した技術を持っている社員、すなわち、有能社員ほど、プレイヤーとしての自分を誇りに思い、個の道を極めることを求めます。

いまは、スタープレイヤーを無理やりコーチにしています。それは、組織としては、最悪の一手なんです。最強のポジションが空いて、平凡なコーチが一人出現するという、ただの弱体化なんです。

有能社員、スタープレイヤーって、わがままで言うこときかないんです。自分に自信があって、人と違うことをものともせずに、突き進むから結果がでるんです。

そんな自分がルールみたいな社員は、どんな上司の言うことなら聞くのでしょうか。

今年、わたしが大好きなカンザスシティチーフスが、50年ぶりにスーパーボウルを制覇しました。素行が悪く、問題児ばかりのチーフスのスーパースターたちは、彼らを、一人の人間として扱い、人間として成長できる道を、やさしく、時には厳しく、本当の親父のように示してくれるアンディリードコーチのことが大好きでした。

そんな彼らの親父は、もうすでに歴史に残る名コーチですが、唯一スーパーボウルを制覇していません。毎日、深夜までオフィスに残り、戦術スクリプトを書いている親父に報いるために、スーパーボウル優勝を、コーチにプレゼントすることを誓います。コーチのために、スーパーわがまま個性の塊たちは、団結します。

「One Play at a Time」「一つの瞬間に一つのプレイ」を合言葉に、若き司令塔パトリックマホームズを中心にして、どんなに勝っていても、どんなに負けていても、1プレイに、すべてを集中します。失敗があっても、決して誰かのせいにせず、むしろ励まし、全員が個より、全体を優先します。コーチ陣は、プレイヤーたちを最後まで信じました。そして、カンザスシティチーフスは、最強の組織の証である、ロンバルディトロフィを獲得します。

名コーチは、選手のことを、一人の人間として扱います。親身になってその人や家族のことを考えて、敵から守り、決断を後押ししてくれるんです。戦術や戦略は、コーチとプレイヤーの信頼関係があって、はじめて機能するんです。

いかにスタープレイヤー社員に、よい給料と、よいコーチたる上司を提供できるか、これからの日本の会社の課題の一つです。なぜなら、本当に同業他社に勝とうと思ったら、有能な第一線の社員を、どれだけ揃えて、彼らがチームとして機能するかにかかっているからです。